生前贈与で相続税を減らす4つのメリットと活用法

- 暦年課税の基礎控除は受贈者1人あたり年110万円で、その範囲内は贈与税がかからない。
- 2024年1月以降、相続開始前7年以内の生前贈与は相続財産に加算される。
- 相続時精算課税にも2024年から年110万円の基礎控除が新設された。
- 相続税の基礎控除は「3,000万円+600万円×法定相続人の数」で、これ以下なら相続税はかからない。
- 贈与は早く始めるほど節税効果が積み上がる。
生前贈与 相続税の結論

生前贈与とは、生きているうちに自分の財産を無償で他人に渡すことです。これを使えば将来の相続財産を減らし、相続税を軽くできます。
ただし、相続税がかかるのはそもそも財産が「3,000万円+600万円×法定相続人の数」の基礎控除を超える人だけです。これ以下なら相続税は発生しません。
正直に言うと、自宅と少しの預金しかない家庭では、相続税対策としての生前贈与に神経をすり減らす必要はあまりありません。私が相続相談の窓口にいたころも、慌てて贈与を始めて老後資金を減らしてしまう方を何人も見ました。
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生前贈与と相続税は、いくつかのキーワードを押さえると全体像がつかめます。

- 暦年課税:年110万円までの贈与が非課税になる毎年の制度。
- 相続時精算課税:累計2,500万円まで贈与税を先送りし、相続時に精算する制度。
- 生前贈与加算:相続前7年以内の贈与を相続財産に足し戻すルール。
- 基礎控除:相続税・贈与税で課税されない一定の枠。
このページでは、この4つを軸に効果と注意点をかみ砕いていきます。
生前贈与の効果とは?
生前贈与の最大の効果は、相続時にまとめてかかる相続税の課税対象を、生きているうちに少しずつ減らせる点にあります。
相続税は、亡くなった時点で持っている財産にまとめてかかります。だから、早めに財産を子や孫へ移しておけば、その分だけ相続財産が減り、結果として相続税も軽くなります。
加えて、自分の意思で「誰に何を渡すか」を決められるのも見逃せません。遺言と違い、渡す相手の反応を生きているうちに見られるのは、贈与ならではの良さです。
生前贈与のメリット

生前贈与のメリットは、相続税対策・財産の早期移転・自分の意思での分割という3つに集約されます。
| メリット | 内容 |
|---|---|
| 相続税対策 | 生前に財産を減らし、相続税の課税対象を圧縮できる |
| 生きているうちに渡せる | 教育費や住宅資金など、必要なタイミングで援助できる |
| 意思による分割 | 誰に何を残すかを自分で決められる |
私の経験では、3つ目の「自分の意思で渡せる」価値を軽く見ている人が多い。お金の話を生前に家族で共有できると、相続のもめごとがぐっと減ります。
相続税の軽減効果がある
暦年課税では受贈者1人あたり年110万円まで贈与税がかからず、この枠を使って毎年財産を移せば相続財産を着実に減らせます。

たとえば子2人に毎年110万円ずつ渡せば、年間220万円が非課税で移動します。10年続ければ2,200万円。これだけの財産を相続財産から外せる計算です。
減税効果が累積する
生前贈与の節税効果は、贈与した年数が長いほど積み上がります。
年110万円の非課税枠は毎年リセットされます。だから、思い立ったときに早く始めた人ほど、トータルで多くの財産を非課税で動かせます。
ただし、2024年1月以降は相続開始前7年以内の贈与が相続財産に加算されるようになりました。亡くなる直前に駆け込みで贈与しても、加算されて効果が薄れます。だからこそ「早く始める」ことの価値が以前より高まりました。
なお、相続開始前3年超7年以内の贈与については、合計100万円を控除した残額が加算されます。直近3年分はまるごと加算、その前の4年分は100万円を引いた額が加算、という二段構えです。
税制改正のリスクを回避できる

早めに贈与を実行しておけば、将来の税制改正で非課税枠が縮小される前に財産を移せます。
実際、2024年の改正で生前贈与加算は3年から7年へ延長されました。制度は変わります。確実に使える今の枠を活かして、計画的に動くほうが安全です。
私が取材した税理士は「制度が有利なうちに動いた人が得をしている」と話していました。改正は前触れなく決まることがあるので、様子見が必ずしも得策とは限りません。
贈与時期を選択でき、評価額の上昇の影響を防げる
値上がりしそうな財産は、評価額が低い今のうちに贈与しておくと、将来の相続税を抑えられます。

ここで効くのが相続時精算課税制度です。この制度は累計2,500万円まで贈与税がかからず、相続時に贈与時点の評価額で相続財産へ加算します。つまり、贈与後に値上がりしても、相続税の計算には低い贈与時の金額が使われます。
相続時精算課税を選べるのは、60歳以上の父母・祖父母から18歳以上の子・孫への贈与です。2,500万円を超えた部分には一律20%の贈与税がかかります。
| 項目 | 暦年課税 | 相続時精算課税 |
|---|---|---|
| 年110万円の基礎控除 | あり | あり(2024年以降) |
| 特別控除 | なし | 累計2,500万円 |
| 超過分の税率 | 金額に応じ段階課税 | 一律20% |
| 相続時の精算 | 原則なし(7年以内は加算) | 贈与財産を相続財産に加算 |
| 途中変更 | 可能 | 一度選ぶと取り消せない |
特定の人に特定の財産を残すことができる
生前贈与なら、自宅は長女に、事業資産は長男に、と特定の財産を特定の人へ確実に渡せます。
ただし、ここには落とし穴があります。法定相続人には遺留分という最低限の取り分があり、特定の人に偏った贈与は、後から遺留分侵害額請求の対象になることがあります。
私が見てきた中でも、もめる相続の多くは「生前に誰かだけ多くもらっていた」ケースです。渡す相手を選べる自由には、他の相続人への配慮がセットだと考えてください。
夫婦間なら、おしどり贈与(夫婦間の居住用不動産の贈与)という特例もあります。家族構成と財産の中身に応じて、使える特例は変わります。
生前贈与を上手く活用する方法は?

生前贈与を効果的に使うコツは、非課税の特例を組み合わせ、対象人数を増やし、早めに始めることです。
目的に合った非課税特例がいくつもあります。教育資金、結婚・子育て資金、住宅取得等資金など、使える人には大きな効果があります。
| 特例 | 対象 | ねらい |
|---|---|---|
| 教育資金の一括贈与 | 直系尊属から30歳未満の子・孫 | 学費などをまとめて非課税で援助 |
| 結婚・子育て資金の一括贈与 | 直系尊属から子・孫 | 結婚・出産・育児費用を援助 |
| 住宅取得等資金の贈与 | 直系尊属から子・孫 | 住宅購入資金を援助 |
| おしどり贈与 | 婚姻20年以上の夫婦間 | 居住用不動産の贈与 |
特例には適用期限や細かい要件があります。使う前に必ず最新の条件を確認してください。生命保険やNISAと組み合わせて、財産の形を整える方法もあります。
多くの人へ贈与する
暦年課税の年110万円の枠は受贈者ごとに使えるので、贈与する相手を増やすほど非課税で移せる総額が増えます。

子だけでなく、子の配偶者、孫まで対象を広げれば、1年で動かせる非課税額は大きくなります。たとえば子2人・孫2人の計4人に110万円ずつなら、年間440万円が非課税です。
ただし、ここで一番気をつけたいのが名義預金です。孫名義の口座にお金を入れても、通帳も印鑑も親が管理していると「実質は親の財産」とみなされ、相続税の対象になります。
私の親の相続でも、祖父が孫名義で貯めていた口座が問題になりかけました。正直、節税のつもりが税務調査の火種になることもあります。記録を残し、もらう側に管理させる。地味ですが、ここを外すと台無しです。
よくある質問
生前贈与と相続税について、相談窓口で特によく聞かれた質問をまとめます。
よくある質問
最後に一言。生前贈与は「節税のテクニック」より先に、自分の老後資金を守ることが大前提です。渡しすぎて介護費用に困っては本末転倒。まず財産の棚卸しをして、必要なら税理士に相談する。その一歩から始めてください。
