生前贈与で相続税金を減らす方法|制度の選び方と節税対策を解説

- 暦年課税の基礎控除は、受贈者1人あたり年110万円。これ以下なら贈与税はかからず申告も原則不要。
- 相続時精算課税は60歳以上の親・祖父母から18歳以上の子・孫への贈与で選べ、累計2,500万円まで特別控除がある。
- 2024年1月から相続時精算課税にも年110万円の基礎控除が加わり、使い勝手が大きく変わった。
- 暦年課税の贈与は相続開始前3年以内分が相続財産に加算される。
- 相続税の基礎控除は『3,000万円+600万円×法定相続人の数』で、これ以下なら相続税はかからない。
生前贈与 相続 税金の結論

生前贈与で税金を抑えたいなら、まず自分の相続財産が「3,000万円+600万円×法定相続人の数」の基礎控除を超えるかどうかを確認するのが先です。
そもそも相続税がかからない人なら、慌てて生前贈与をして贈与税を払う必要はありません。相続・終活の取材を12年続けてきて、この基礎控除を知らずに焦って贈与し、かえって損をしかけた家庭を何度も見ました。
相続税の基礎控除は、相続財産がこの額以下なら原則として相続税はかからない金額です。たとえば配偶者と子ども2人なら、3,000万円+600万円×3人=4,800万円までは非課税になります。
1-1. 生前贈与とは
生前贈与とは、財産を持つ人が生きているうちに、自分の意思で財産を他人に無償で渡すことです。

亡くなってから財産が移る相続と違い、誰に・いつ・いくら渡すかを自分で決められます。渡す相手は子どもでも孫でも、法定相続人以外でも構いません。
ただし、渡した財産には贈与税がかかる場合があります。贈与税の課税方式は主に「暦年課税」と「相続時精算課税制度」の2つで、どちらを選ぶかで非課税枠や申告の要否、相続時の扱いが変わってきます。
1-2. 贈与税の計算方法
暦年課税の贈与税は、1年間に受け取った贈与額の合計から基礎控除110万円を引き、残った金額に税率をかけて計算します。
1月1日から12月31日までの1年間に受けた贈与の合計が110万円以下なら、贈与税はかからず、通常は申告も不要です。これは「もらった人1人あたり」の枠だという点を間違えないでください。
申告が必要な場合の期限は、贈与を受けた年の翌年2月1日から3月15日まで。所得税の確定申告と時期が重なるので、忘れやすいところです。
2-1. 生きているうちに財産を贈与できる

生前贈与の最大の利点は、財産を渡すタイミングと相手を自分で選べることです。
相続は亡くなって初めて発生しますが、生前贈与なら元気なうちに「この子に家の頭金を」「孫に学費を」と意思を込めて渡せます。受け取る側も、必要なときに資金を手にできる。
私の取材経験でも、子どもが住宅を買うタイミングで親が資金を援助できたケースは、家族の満足度がかなり高かったです。お金が動く理由がはっきりしているからだと思います。
2-2. 相続税対策ができる
生前贈与で財産を少しずつ移しておくと、相続時の財産総額が減り、結果として相続税を抑えられる場合があります。

暦年課税の110万円枠を毎年使えば、長い年月をかけて非課税で財産を移せます。たとえば10年続ければ、1人あたり最大1,100万円を贈与税ゼロで動かせる計算です。
ただし注意点がひとつ。暦年課税の生前贈与は、相続開始前3年以内のものが相続財産に加算されます。亡くなる直前の駆け込み贈与は、相続税の計算に取り込まれてしまうわけです。
2-3. 自分の意思による財産の分割ができる
生前贈与なら、誰にどの財産を渡すかを自分の判断で決められ、相続時のもめごとを減らせます。
遺産分割は、亡くなった後に相続人同士で話し合うもの。ここで意見が割れて関係がこじれる家庭を、私は何度も取材してきました。生前に渡しておけば、本人の意思がはっきり残ります。
ただし、特定の人に偏って渡すと、他の相続人の遺留分を侵害する恐れがあります。遺留分とは、一定の相続人に最低限保障された取り分のこと。ここを無視した贈与は、後から争いの火種になります。
3-1. 相続時精算課税制度による税金対策

相続時精算課税制度は、60歳以上の父母または祖父母から18歳以上の子・孫への贈与について、累計2,500万円まで贈与税がかからない制度です。
受贈者が選択して適用し、一度選ぶと同じ贈与者との関係では継続して使い続けることになります。特別控除2,500万円を超えた部分には、一律20%の贈与税がかかります。
そして2024年1月以降、この制度にも年110万円の基礎控除が加わりました。特定贈与者ごとに、1年分の贈与額から110万円を引けるようになったのです。正直、この改正で使い勝手は大きく上がったと感じています。
ただし忘れてはいけないのが、相続時に精算するという仕組み。この制度で受けた贈与は、相続開始時に累積贈与額(基礎控除部分を除く)を相続税の課税価格に加算して計算します。つまり相続税としては後で清算されます。
| 項目 | 暦年課税 | 相続時精算課税 |
|---|---|---|
| 対象者 | 制限なし | 60歳以上の親・祖父母から18歳以上の子・孫 |
| 非課税枠 | 年110万円(基礎控除) | 累計2,500万円(特別控除)+年110万円(基礎控除) |
| 超過分の税率 | 金額に応じた累進税率 | 一律20% |
| 相続時の加算 | 相続開始前3年以内分を加算 | 基礎控除を除く累積贈与額を加算 |
3-2. 暦年課税による税金対策
暦年課税による対策の基本は、年110万円の基礎控除を毎年こつこつ使って財産を移すことです。

110万円以下なら贈与税はかからず申告も不要なので、最も手軽な方法です。複数の子や孫に分けて渡せば、1年でまとまった額を非課税で移せます。
私が銀行の相続相談窓口にいた頃、よく勧めたのもこの方法でした。ただし毎年同じ額を同じ日に渡し続けると、最初からまとまった額を渡す約束だったとみなされる恐れがある。贈与のたびに契約書を残すなど、その都度の贈与だと示す工夫が要ります。
3-3. 教育資金の一括贈与の特例
教育資金の一括贈与の特例は、子や孫の教育費をまとめて非課税で贈与できる制度です。
金融機関に専用口座を開き、入学金や授業料などの教育資金として使うことを前提に、一括で資金を渡せます。学費は何かとまとまって出ていくものなので、孫の進学を控えた家庭では検討の余地があります。
ただし、適用期限や非課税の上限、使い残した場合の課税といった細かい条件があります。利用を考えるなら、最新の要件を必ず確認してください。確実に言える数値の裏づけが手元にないため、ここでは金額の断定は避けます。
3-4. 結婚・子育て資金の一括贈与の特例

結婚・子育て資金の一括贈与の特例は、子や孫の結婚や子育てにかかる費用をまとめて非課税で渡せる制度です。
挙式費用や新居の費用、出産・育児にかかるお金などが対象になります。教育資金の特例と同じく、専用口座を通じて使うしくみです。
こちらも適用期限や上限額、使い切れなかった場合の扱いに条件があります。私の取材実感では、教育資金ほど利用件数は多くない印象です。使い道が限られるぶん、本当に必要な家庭向けの制度だと考えています。
3-5. 住宅取得等資金の贈与の特例
住宅取得等資金の贈与の特例は、子や孫がマイホームを取得するための資金を、一定額まで非課税で贈与できる制度です。

住宅の購入・新築・増改築のための資金が対象で、若い世代の住宅取得を後押しする狙いがあります。子の住宅資金援助は、生前贈与の中でも喜ばれる使い方のひとつです。
非課税の上限は住宅の性能や契約時期で変わり、適用には細かい要件があります。金額は年度や条件で動くため、ここでは断定せず、利用前に最新の要件確認を強くおすすめします。
よくある質問
生前贈与と相続の税金について、相談窓口で特によく受けた質問をまとめました。
よくある質問
最後に、現場で12年見てきた立場から一言。生前贈与は「節税の裏ワザ」ではなく、家族にお金を渡す意思を形にする手段です。まずは自分の財産が相続税の対象になるか計算し、迷ったら相続に強い税理士に一度相談してください。それが遠回りに見えて一番確実な一歩です。
