生前贈与と相続税の関係とは?節税対策と制度の選び方を解説

- 暦年課税の基礎控除は受贈者1人あたり年110万円で、これ以下なら原則として贈与税はかからない。
- 相続開始前7年以内の生前贈与は、相続財産に加算される(2024年1月以後の贈与から段階的に拡大)。
- 相続時精算課税制度は特別控除2,500万円までかからず、2024年からは年110万円の基礎控除も追加された。
- 相続税の基礎控除は「3,000万円+600万円×法定相続人の数」で、これ以下なら相続税はかからない。
- 贈与税の申告期限は翌年3月15日まで、相続税の申告期限は相続開始を知った日の翌日から10か月以内。
生前贈与と相続税の結論

生前贈与は使い方次第で相続税を減らせますが、「とりあえず贈与しておけば安心」というほど単純ではありません。
私が相続の取材を続けてきて何度も見たのは、「節税のつもりで毎年贈与していたのに、亡くなる直前の分が相続財産に戻されて意味がなかった」というケースです。
2024年1月以後の贈与から、相続開始前の加算期間が3年から7年へ段階的に延びました。つまり、思い立ってから亡くなるまでの時間が短いと、節税効果は薄くなります。
1-1. 生前贈与とは
生前贈与とは、財産を持つ人が生きているうちに、その財産を無償で他人に渡すことです。

渡す側を「贈与者」、もらう側を「受贈者」と呼びます。難しく聞こえますが、要は「親が生きているうちに子へ財産を渡す」ような行為のことです。
相続が「亡くなってから財産が移る」のに対し、生前贈与は「生きているうちに移す」点が違います。だからこそ、自分の意思で誰に何を渡すか決められます。
ただし、もらった側には贈与税がかかります。この贈与税の仕組みを理解しないまま渡すと、思わぬ税金が発生します。
1-2. 贈与税の計算方法
贈与税には「暦年課税」と「相続時精算課税制度」の2つの方式があり、どちらを使うかで計算が変わります。
暦年課税は、1年間(1月1日〜12月31日)にもらった財産の合計から、基礎控除110万円を引いた額に税率をかけます。110万円以下なら、原則として贈与税はかかりません。
相続時精算課税制度は、特定の贈与者ごとに累計2,500万円まで贈与税がかからず、超えた部分に一律20%が課税されます。
| 項目 | 暦年課税 | 相続時精算課税制度 |
|---|---|---|
| 非課税枠 | 年110万円(基礎控除) | 累計2,500万円(特別控除)+年110万円(2024年〜) |
| 税率 | 超過分に累進課税 | 2,500万円超の部分に一律20% |
| 対象者 | 制限なし | 原則60歳以上の父母・祖父母→18歳以上の子・孫 |
| 途中変更 | 可 | 選択後は同じ贈与者について変更不可 |
正直に言うと、この2方式の選択はかなり悩ましいところです。一度相続時精算課税を選ぶと、その贈与者からの贈与は後から暦年課税に戻せません。
2-1. 生きているうちに財産を贈与できる

生前贈与の最大の特徴は、財産を渡したい相手へ、自分が生きているうちに確実に渡せることです。
相続では、財産を渡すタイミングを自分で選べません。亡くなってから、法律や遺言にもとづいて分けられます。
その点、生前贈与なら「孫が大学に入るこの年に渡したい」「事業を継ぐ長男に早めに渡したい」といった、タイミングを自分で決められます。
私の親が存命のうちに少しずつ資金を渡してくれたとき、「ありがとう」と直接伝えられたのが何より良かったと感じています。渡す側も、相手の喜ぶ顔を見られる。これは相続にはない価値です。
2-2. 相続税対策ができる
生前贈与で財産を先に移しておけば、亡くなったときの相続財産が減り、結果として相続税を抑えられます。

相続税の基礎控除は「3,000万円+600万円×法定相続人の数」です。たとえば法定相続人が3人なら、4,800万円までは相続税がかかりません。
この基礎控除を超えそうな財産があるなら、生前贈与で計画的に減らしておくと相続税の負担が軽くなります。
だからこそ、相続税対策としての生前贈与は「長期戦」です。私が取材した税理士も口をそろえて「早ければ早いほどいい」と言います。
2-3. 自分の意思による財産の分割ができる
生前贈与なら、誰にどの財産をどれだけ渡すかを、自分の意思ではっきり決められます。
相続だと、遺言がなければ法定相続分にしたがって分けることになり、家族の話し合いがこじれることも珍しくありません。
生前に「この土地は同居している長女に」と渡しておけば、自分の希望が確実に反映されます。
ただし、ここで気をつけたいのが「遺留分」です。特定の人に偏って贈与すると、他の相続人の最低限の取り分を侵害してしまい、後でもめる火種になります。これは後ほど触れます。
3-1. 相続時精算課税制度による税金対策

相続時精算課税制度は、累計2,500万円まで贈与税をかけずにまとまった財産を渡せる制度です。
対象は、原則として60歳以上の父母・祖父母から、18歳以上の子・孫への贈与です。2,500万円を超えた部分には一律20%の贈与税がかかります。
2024年1月以後の贈与からは、この制度にも年110万円の基礎控除が新たに導入されました。これが大きな変化です。
以前の相続時精算課税は「贈与した分はすべて相続時に足し戻される」ため、節税効果が薄いとされていました。しかし110万円の基礎控除分は相続財産に加算されないため、使い勝手が良くなりました。
3-2. 暦年課税による税金対策
暦年課税は、年110万円の基礎控除を毎年使いながら、長い時間をかけてコツコツ財産を移す方法です。

1年あたり110万円以下なら贈与税がかからず、これを毎年続けることで、無税のまま相続財産を減らせます。
たとえば子2人へ毎年110万円ずつ10年渡せば、単純計算で2,200万円を無税で移せます。
ただし2024年の改正で、相続開始前7年以内の贈与は相続財産に加算されるようになりました。亡くなる直前の数年分は、結局相続税の計算に戻されます。
私の率直な意見としては、暦年課税は「健康なうちに、できるだけ早く始める人」向きです。高齢になってからの開始では、加算期間に飲み込まれて効果が出にくいからです。
3-3. 教育資金の一括贈与の特例
教育資金の一括贈与の特例は、子や孫の教育資金をまとめて贈与する際に、一定額まで非課税にできる制度です。
祖父母から孫へ、入学金や授業料といった教育目的の資金を一括で渡すときに使われます。金融機関で専用口座を作り、教育費として使った証明を提出する仕組みです。
使い切れずに残った分には贈与税がかかる場合があるなど、適用条件は細かく定められています。利用を考えるなら、最新の要件を国税庁の資料で確認してください。
3-4. 結婚・子育て資金の一括贈与の特例

結婚・子育て資金の一括贈与の特例は、結婚や子育てにかかる資金を、一定額まで非課税で一括贈与できる制度です。
対象になるのは、結婚式の費用や住居費、出産・育児にかかる費用などです。こちらも金融機関で専用口座を使い、使途を証明する形で運用します。
教育資金の特例と同様、年齢要件や非課税の上限、適用期限が定められています。残った資金の扱いにも注意が必要です。
正直なところ、この特例は手続きが煩雑で、使う人を選びます。まとまった子育て資金を早く渡したい明確な理由がある場合に検討する、くらいの位置づけだと私は考えています。
3-5. 住宅取得等資金の贈与の特例
住宅取得等資金の贈与の特例は、子や孫がマイホームを買う資金を、一定額まで非課税で贈与できる制度です。

父母や祖父母から、住宅の新築・取得・増改築のための資金をもらうときに使えます。住宅の性能や契約時期によって非課税の上限が変わります。
この特例は、非課税枠や適用期限が改正のたびに見直されてきました。利用するなら、契約前に必ず国税庁の最新資料で条件を確認してください。
よくある質問
生前贈与と相続税について、検索でよく一緒に調べられている疑問にまとめて答えます。
よくある質問
最後に一言。生前贈与は「税金を減らすため」だけの手段ではありません。元気なうちに、渡したい人へ、自分の意思で財産を託せる。その安心感こそ、私が取材を通じて一番価値があると感じている部分です。まずは自分の財産を書き出すところから始めてみてください。
