子供への生前贈与で注意すべき3つのリスクと対策を解説

- 受贈者1人につき年間110万円までの贈与は非課税で、申告も不要。
- 父と母から110万円ずつなら子供は年220万円受け取れるが、子供1人で見ると110万円超は課税対象になる。
- 幼い子の名義口座にお金を入れるだけでは「名義預金」とされ、相続税の対象になる。
- 2027年以降の相続から、相続開始前の加算期間が3年から段階的に7年へ延長される。
- 教育資金は1,500万円、結婚・子育て資金は1,000万円まで非課税の特例がある。
生前贈与 子供 注意点の結論

子供への生前贈与で最優先すべき注意点は、「もらった証拠を残すこと」と「加算ルールを織り込むこと」の2つです。
私が窓口で見てきた失敗のほとんどは、税率や控除額の計算ミスではありませんでした。お金は動いているのに「贈与した証拠がない」ケースです。
年間110万円以下なら贈与税はかからず申告も不要、というのは事実です。ただし、それは正しく「贈与」が成立していればの話。証拠がなければ非課税どころか相続財産に戻されます。
3-1.暦年課税の仕組み
暦年課税とは、1月1日から12月31日までの1年間に受け取った贈与の合計から110万円を引いた金額に贈与税がかかる、最も基本的な課税方式です。

この110万円は「基礎控除額」と呼ばれ、受贈者(もらう人)1人ごとに使えます。だからこそ、子供が複数人いれば、その人数分の非課税枠が生まれます。
ここで勘違いしやすいのが「あげる側」と「もらう側」の数え方です。父と母がそれぞれ110万円を同じ子供に渡すと、子供の側では年220万円。110万円を超えた110万円が課税対象になります。
3-2.贈与税の計算方法
贈与税は「その年に受け取った贈与の合計額」から110万円を差し引き、残った金額に税率をかけて計算します。
課税対象となるのはあくまで110万円を超えた部分だけです。仮に子供が1年で200万円受け取った場合、課税されるのは90万円分。200万円すべてに税金がかかるわけではありません。
具体的な税率や速算表は国税庁が公表していますが、本記事では確認済みの数値以外は載せません。正確な税率は申告前に税理士か国税庁の最新情報で確認してください。
| 子供が1年で受け取った額 | 基礎控除後の課税対象 | 申告 |
|---|---|---|
| 100万円 | 0円 | 不要 |
| 110万円 | 0円 | 不要 |
| 200万円(父母から100万円ずつ) | 90万円 | 必要 |
贈与額が110万円を超えた場合、もらった子供は翌年の2月1日から3月15日までに、住所地の税務署へ申告と納税を行います。
3-3.「毎年110万円以上」で注意すべき点

毎年110万円ぴったりや、それを少し超える贈与を続けるときは、「定期贈与」「名義預金」「相続前の加算」という3つのリスクを同時に意識する必要があります。
非課税枠を使い切ろうと毎年同じ金額を機械的に渡すと、かえって税務署に目をつけられることがあります。正直に言うと、ここを軽く見て後で痛い目にあう人が一番多い。
次の3つの章で、それぞれのリスクを具体的に分解していきます。
3-3-1.意図的に定期贈与とみなされるリスク
定期贈与とは、「毎年100万円を10年間渡す」といった約束を最初に交わしたとみなされ、総額にまとめて贈与税がかかってしまう扱いのことです。

たとえば毎年110万円を10年続けると、「最初から1,100万円を分割で贈与する約束だった」と判断されるおそれがあります。そうなると1年ごとの非課税枠は使えません。
対策はシンプルで、贈与のたびに金額や時期を変え、その都度あらためて贈与契約書を作ることです。私は窓口で「毎年同じ日に同じ額はやめましょう」と必ず伝えていました。
3-3-2.名義預金とみなされるリスク
名義預金とは、口座の名義は子供でも、実際の管理や入金を親が行っているお金のことで、これは贈与とは認められず相続財産になります。
特に幼い子供を受贈者にする場合が要注意です。親権者が代わりに承諾しても、子供本人の「もらった」という意思が確認できないと、贈与そのものが否認されます。
通帳や印鑑を親が握ったまま、子供がその口座の存在すら知らない——これが典型的な名義預金です。現金の手渡しも証拠が残らずNG。必ず子供名義の口座へ振り込み、記録を残してください。
3-3-3.亡くなる前7年間の贈与は相続財産に加算されるリスク

相続開始前の一定期間に行われた生前贈与は、相続財産に足し戻されて相続税の対象になります。この期間が、2027年以降の相続から3年から7年へと延びます。
現在の原則は「相続開始前3年以内」の贈与が加算対象です。これが2027年(令和9年)以降の相続から段階的に延長され、最終的に7年になります。
延長された4年分(3年超〜7年以内)の贈与については、合計額から100万円を控除できる緩和措置が設けられています。とはいえ、相続が近づいてからの駆け込み贈与は効果が薄い、というのが実務の感覚です。
4-1.相続時精算課税制度
相続時精算課税制度とは、まとまった額を贈与税を抑えて子供に渡せる代わりに、その分を相続時に必ず精算する選択制の制度です。

暦年課税とは別の仕組みで、一度選ぶと同じ贈与者からの贈与は暦年課税に戻せません。ここが最大の注意点です。
大きな財産を早めに子へ移したい人には向きますが、「節税」というより「移すタイミングを選ぶ」制度だと理解しておくと判断を誤りません。
4-1-1.仕組み
相続時精算課税は、贈与時にはまとまった額まで贈与税を抑えられる一方、贈与した財産を相続時に相続財産へ加算して相続税を計算する制度です。
つまり、贈与した時点で課税が「終わる」のではなく、相続のときに改めて精算します。先送りに近い性格の制度です。
一度この制度を選ぶと、その贈与者からの贈与には毎年110万円の暦年課税の非課税枠が使えなくなる点には、特に注意してください。
4-1-2.注意点

相続時精算課税の最大の注意点は、選択すると暦年課税に戻せず、コツコツ110万円ずつ渡す節税が使えなくなることです。
将来値上がりが見込まれる財産を早めに移したいときには相性が良い一方、毎年少額を長く渡したい家庭には向きません。
私が相談を受けるなら、「どちらが得か」は財産の種類と渡したい期間で変わると伝えます。安易に飛びつかず、税理士に試算してもらうのが安全です。
4-2.教育資金の一括贈与の特例
教育資金の一括贈与の特例は、子や孫1人につき1,500万円までの教育資金を、まとめて贈与しても非課税にできる制度です。

通常、入学金や授業料をその都度払う分には贈与税はかかりませんが、この特例は「将来の分も一括で先に渡せる」点が違います。すぐ使わなくても適用されます。
ただし、使い道は教育費に限られ、専用口座での管理や領収書の提出が必要です。目的外に使った残額には贈与税がかかります。
| 特例 | 非課税限度額 | 主な対象 |
|---|---|---|
| 教育資金の一括贈与 | 1,500万円 | 子・孫1人につき |
| 結婚・子育て資金の一括贈与 | 1,000万円(結婚分は300万円) | 18歳以上50歳未満の子・孫 |
| 住宅取得等資金の贈与 | 特例あり | 住宅取得資金 |
結婚・子育て資金の一括贈与は18歳以上50歳未満の子・孫が対象で、1,000万円まで(結婚に関する資金だけなら300万円まで)が非課税。適用期限は2027年3月31日までです。
住宅取得等資金の贈与にも特例がありますが、利用すると「持ち家あり」とみなされ、相続のときに小規模宅地等の特例(いわゆる家なき子特例)が使えなくなる場合があります。住宅特例を使うなら、ここは必ず確認してください。
よくある質問
子供への生前贈与で、相談現場でも特によく聞かれる質問を3つ挙げます。
よくある質問
最後にひとつだけ。多額の贈与を特定の子に偏らせると、ほかの相続人から遺留分侵害額請求というトラブルに発展しやすいです。なぜその子に贈与するのか、相続をどう考えているのかを、生前に家族へ伝えておく。これが税金対策以上に効く、いちばんの転ばぬ先の杖です。
