生前贈与の手続きと必要書類|現金・不動産・株式別に徹底解説

- 生前贈与の基本書類は、贈与契約書・本人確認書類・印鑑(実印)・印鑑証明書の4点。
- 必要書類は財産の種類で変わり、不動産は登記書類、自動車は名義変更書類が追加で必要。
- 暦年課税は1年110万円以下なら原則として贈与税の申告不要(国税庁)。
- 贈与税の申告は原則として受贈者が行い、申告時はマイナンバーの記載と本人確認書類が必要。
- 不動産の贈与登記で使う贈与者の印鑑証明書は、発行後3か月以内のものを用意する。
生前贈与 手続き 必要書類の結論

生前贈与の必要書類は、全財産に共通する基本書類と、財産の種類ごとに追加する書類の2層で考えると整理できます。
共通の基本は4つ。贈与契約書、本人確認書類、実印、印鑑証明書です。これに「現金なら振込記録」「不動産なら登記書類」というように、財産ごとの書類を足していきます。
所要時間の目安は、現金の贈与なら契約書づくりと振込で1〜2日。不動産は書類集めから登記完了まで2週間前後はみておくと安心です。難易度は、現金なら初心者でも十分自力で可能、不動産は司法書士に頼むかどうか迷うレベル、というのが私の実感です。
国税庁は、贈与税の申告は原則として受贈者(もらう側)が行い、申告書の提出時にはマイナンバーの記載と本人確認書類の提示または写しの添付が必要だと案内しています。
1-1.贈与契約書
贈与契約書は、あげる・もらうの合意を残す書類で、財産の種類にかかわらず最初に用意すべき1枚です。

法律上は口頭でも贈与契約は成立します。それでも実務では書面にしておくのが基本。理由はシンプルで、後の税務調査や親族間トラブルで「本当に贈与だったのか」を証明する証拠になるからです。
私が取材した司法書士は、口約束のまま預金だけ動かして、後から「これは貸付では?」と税務署に疑われたケースを挙げていました。1枚あるかないかで、説明の手間がまるで違います。
書く内容は、贈与する人・受け取る人の氏名、贈与する財産(金額や物件)、贈与日、双方の署名押印。これだけで十分機能します。
1-2.本人確認書類
本人確認書類は、贈与税の申告をする際に欠かせない書類です。
国税庁は、贈与税の申告書の提出時に、受贈者本人のマイナンバーの記載と、本人確認書類の提示または写しの添付が必要だと案内しています。
具体的には、マイナンバーカードがあればそれ1枚で番号確認と身元確認の両方が済みます。カードがない場合は、通知カードやマイナンバー記載の住民票で番号を確認し、運転免許証など顔写真付きの本人確認書類を別途用意する形です。
ここでつまずく人が多いのは「コピーの取り忘れ」。郵送提出なら写しの同封を忘れると差し戻しになります。提出前に、表面・裏面のコピーを揃えたか必ず確認してください。
1-3.印鑑・印鑑証明書

贈与契約書や不動産登記では、実印と印鑑証明書がセットで必要になります。
現金の贈与だけなら認印でも契約書は作れますが、不動産の名義変更(登記)では贈与者の実印と印鑑証明書が必須です。
注意したいのが有効期限。不動産の贈与登記で提出する贈与者の印鑑証明書は、発行後3か月以内のものが必要だと案内されています。書類集めに時間がかかると、最初に取った証明書が期限切れになることがあるので、印鑑証明書は最後のほうに取得するのがコツです。
2-1.現金・預貯金の場合
現金・預貯金の贈与は、基本書類に「振込記録」を足すだけで、財産の中では最も手続きが簡単です。

用意するのは、贈与契約書、本人確認書類、そして振込の記録。手渡しではなく銀行振込にしておくと、いつ・誰から誰へ・いくら移したかが通帳に残ります。
私が強く勧めたいのは、必ず受贈者本人が管理する口座へ振り込むこと。親が子名義の口座を作って通帳も印鑑も親が持っている、いわゆる名義預金は、税務署から「贈与が成立していない」と見なされやすい典型です。
暦年課税では、1年間(1月1日〜12月31日)の贈与額が110万円以下なら原則として贈与税はかかりません。この範囲でも、契約書と振込記録は残しておくべきです。
| 書類 | 役割 | ポイント |
|---|---|---|
| 贈与契約書 | 合意の証拠 | 贈与日・金額・署名押印を明記 |
| 本人確認書類 | 申告時に必要 | 受贈者のマイナンバーと身元確認 |
| 振込記録(通帳) | 資金移動の証拠 | 手渡しを避け本人口座へ振込 |
2-2.不動産(土地・建物)の場合
不動産の生前贈与は、法務局での所有権移転登記が必要で、必要書類が一気に増えます。
所有権移転登記の基本書類として、一般に登記申請書、登記原因証明情報、登記済証または登記識別情報、贈与者の印鑑証明書、受贈者の住民票、固定資産評価証明書が挙げられます。
固定資産評価証明書は、登記でかかる登録免許税の計算に使います。名義変更する年のものを用意するよう案内されています。古い年度のものだと税額が合わなくなるので注意してください。
| 書類 | 誰が用意 | 補足 |
|---|---|---|
| 登記申請書 | 申請者 | 自分で作成または専門家が作成 |
| 登記原因証明情報 | 贈与者・受贈者 | 贈与契約書で兼ねることも可 |
| 登記済証または登記識別情報 | 贈与者 | 物件取得時に受け取った権利の書類 |
| 贈与者の印鑑証明書 | 贈与者 | 発行後3か月以内のもの |
| 受贈者の住民票 | 受贈者 | 新しい名義人の住所証明 |
| 固定資産評価証明書 | 申請者 | 名義変更する年のもの |
手順はこう進みます。(1)上記の書類を集める→(2)登記申請書を作る→(3)管轄の法務局へ申請→(4)登記完了。ここまでできていれば名義変更は完了です。
自分で申請することもできますが、書類の不備で何度も法務局に足を運ぶ人を私は何人も見てきました。平日に動けない人や権利関係が複雑な物件は、司法書士に依頼するほうが結局は早くて確実、というのが正直な意見です。
2-3.株式・有価証券の場合

株式・有価証券の贈与は、証券会社の口座間で名義を移す手続きが中心になります。
基本となる贈与契約書と本人確認書類に加えて、証券会社所定の振替依頼書を使い、贈与者の口座から受贈者の口座へ株式を移します。受贈者がその証券会社に口座を持っていなければ、まず口座開設から始める必要があります。
必要書類の細目は証券会社ごとに様式が異なります。手続き前に取引のある証券会社へ、贈与による移管の必要書類を確認しておくと二度手間になりません。贈与額が基礎控除を超える場合は、贈与税の申告も忘れずに。
2-4.自動車の場合
自動車の贈与は、運輸支局での名義変更(移転登録)が必要です。

贈与契約書のほか、譲渡を証明する書類、新所有者(受贈者)の車庫証明、双方の印鑑関係書類などを揃えて手続きします。普通自動車は実印と印鑑証明書が必要になる場面が多く、軽自動車は手続きがやや簡素です。
自動車そのものに加え、自動車の評価額も贈与財産に含まれます。年間の贈与合計が110万円を超えるなら、他の財産と合算して申告要否を判断してください。
3-1.共通の添付書類
贈与税の申告をする場合、申告書に共通して添えるのが本人確認書類です。
国税庁は、申告書の提出時にマイナンバーの記載と本人確認書類の提示または写しの添付が必要だと案内しています。これはどんな財産を贈与した場合でも共通する基本です。
ここに、贈与の事実を裏づける贈与契約書や、財産移動の記録(振込記録・登記事項証明書など)を添えると、申告内容の説明がスムーズになります。
3-2.制度や特例に応じた必要書類

非課税の特例や相続時精算課税を使うときは、申告内容に応じた追加書類が必要になります。
国税庁は、申告書に加えて、内容に応じて戸籍関係書類や登記事項証明書などの添付が必要になる場合があると案内しています。たとえば親子間の特例を使うなら、続柄を示す戸籍関係の書類が求められます。
相続時精算課税制度は、2024年(令和6年)1月1日以後の贈与について、年110万円の基礎控除が設けられました。制度を選択していても、年110万円以下なら申告不要となるケースがあります。
| 制度 | ポイント | 追加で必要になりやすい書類 |
|---|---|---|
| 暦年課税 | 年110万円以下は原則申告不要 | 契約書・振込記録など(任意で保管) |
| 相続時精算課税 | 2024年以降は年110万円の基礎控除あり | 選択届出書・戸籍関係書類など |
| 各種非課税特例 | 申告内容に応じ書類が変わる | 戸籍関係書類・登記事項証明書など |
長谷川 哲也
相続税の申告や生前の相続対策で迷ったら、税理士など専門家への相談が確実な近道です。

正直に言うと、現金の少額贈与は自力で十分こなせます。けれど不動産が絡む贈与や、相続時精算課税を選ぶかどうかの判断は、私自身も親の相続のとき専門家に確認して安心できた部分でした。
贈与は「やったつもり」が一番こわい。契約書も振込記録もないまま年月が経つと、後の相続で家族がもめます。書類を残すこと、これが生前贈与を円滑に進める一番の土台です。
